西瓜の夏ー制作記その5/川の水表現
もう10月ですって!
多少肌寒い日が続いたりしましたが、今日のようにTシャツ1枚でも暑い!っていう日が続いたりして。
秋が来たのかどうかも疑問に思ってしまいます。
今年は暖冬になるようです。寒がりの私にとっては有り難い。。。
という事で、今回はいよいよ川の水表現にはいっていきます。
昔からジオラマの「水」表現は情景技術の頂点だなぁと感じていました。
しかもちょっと水部分があるだけで、その作品がもの凄く完成度の高い物に見えてしまう魔法のアイテム♫
水の表現には透明レジンを使いますが、その素材を使いこなす事にもの凄く抵抗感というか・・・ハードルの高さを感じているのはおそらくかつての私だけではないなず。
モデラーの誰もが「いや〜・・・いつかはやりたいとおもっているけど、なんか敷居が高くて。。。」と思っている事でしょう。
でも、透明レジンを買って来て、説明書通にちゃんと計測して、良く撹拌して、流し込む・・・指定時間+αをワクワクしながら待てば・・・・あら出来上がり♪
そんなに難しくはありません。よ!
さて、今回はいよいよこのジオラマのクライマックス・川の制作です。
川の中の様子を川の上から眺めた時にちらりと見える「清流」を作りたい!というコンセプトで進めております。
この清流のジオラマは今回が初めてではなくて今を去る事・・・もう16年まえの話ですが、27歳の時にチャレンジして制作したものがあります。
いいでしょ〜。いつもの様に日光下で撮影すると本物みたい!
実はこの川は一度近年に作り替えています。
27歳の時に作った時には鉄道模型店の棚でよく見かける「水の元」と言われる寒天のような熱溶解素材で作ったのですが、10年程経過したらもの凄く縮んで、しかも濁りが凄くて(大泣)。しかもプラスチックを溶かす特性がありまして、川でおよくアヒルの下半身をすっかりと溶かしてくれました。絶対に使っては行けない素材です!
残念な顛末になったジオラマですが私にとっても思い出深い作品なので思い切って「文化財復元工事」を施しました(笑)。。。。あの頃以上の川の表面の輝きが増してうれしい限り!!。その際に植栽も現在のリアルなタイプに置き換えたりして完成度をさらにアップしています。
この時のノウハウがありますので今回はこれを応用しての制作です。
↑この作品も重要な作品ですのでいつか紹介しますね♪。
古い石橋が架かる川には錦鯉が似合います。
川面からチラリと見えるカラフルな色彩・・・むむむむ、これは見てみたい光景!
ということで、1/32スケールの錦鯉の制作です。
売っている訳ではありませんのでタミヤのエポキシパテでチマチマと制作します。
上から見た魚ってけっこう難しい。。。爪楊枝を使ってつつくように作りました。
そんでもって、えいや!と塗装。
・・・・ん〜ん今見ると小学生が書いた絵みたいだなぁ。
あまり完成度は高くはありませんが、透明レジンを流し込むと解らなくなるのでこんな感じで。お腹の部分に真鍮線を入れて川底からちょっと浮かせて固定します。
これで下準備は完了!
ここに透明レジンを流し込みます。と、その前に・・・・川底はラッカーのクリアーをたっぷりと塗って、目処目しておきます。これを怠ると後から大変な目にあいます。透明レジンは浸透性が高いのでかなり小さな亀裂などから漏れ出してくるんです。私は何度も痛い目にあいました。。。
使用する透明レジンはいろいろ使った中で使い勝手がよかった「
デプコン:Devcon 透明レジン ET」を愛用しています。
硬化時間はほぼ1日かかりますが(表記上はもっと短いですが)、気泡が入りにくく、かなり高硬度で、紫外線の劣化が少ないようです。
(追記:作業する季節や部屋の室温や湿度により硬化時間に影響があります。特に湿気には気をつけてください)
主剤と硬化剤が2:1の比率は計算しやすい!。ただし特殊な匂いがします。古い油の匂いのような感じ。
私はそんなに嫌いじゃないんですけどね。
計量にはキッチンスケールを使用します。私のはドンキホーテで買った安売りのもの。長年の使用感が凄い!。
ワンフェスに出ていた頃に型取り作業で酷使しましたからね。
↓安くてシンプルなデザインでこちらがオススメです。
計測作業はしっかりと。
手を抜くと、結果としてまったく固まらずにいつまでもべトべト・ドロドロのままになりますのでご注意を
(経験済み:泣)!
計測用のポリカップと撹拌棒はホームセンター等で手に入ります。
そしていよいよ流し込み♪
気泡が入らないように細い筋ぐらいの流し込みの強さで。ちなみにこのデプコンは環境からの影響度は少ないですが晴れた日の乾燥した時にやるのがポイント。湿気がある日には気泡が増える傾向があります。
今回は清流を作りたいので透明レジンの素材色そのままです。
海やちょっと藻が多い水辺などはこのレジンを撹拌している最中に透明アクリル塗料を混ぜてその色を調節します。川底などを作るのが面倒な人は不透明な塗料を混ぜて水を濁らせるといいでしょう。
流し込んで説明書にある硬化時間が近づいてくると、レジンが『水飴』のようにドロドロになってきます。
この時に表面を竹串や爪楊枝でつつきます。かなり粘度があるので「にちゃぁ〜〜」と爪楊枝の先に絡み付くように
引っ付きますが、気にせずにつつきまくります。堅さのバランスが難しいのですが、何度も何度も繰り返すうちに
川の表面がとてもいい感じに「うねり」が出来るのです。
硬化がまだまだならば、苦労して作った川のウネリは元通りの真っ平らになります(泣)
そして硬化が思ったよりも早く進んでいたら、川面に「いかにも爪楊枝でつついた」醜い跡が残るだけになってしまいます。この見極めは、このレジンを流した日には1日ジオラマに張り付いてタイミングを逃さずに観察する事ですね。張り込みデカのように(笑)
と、そんな苦労の末に出来上がった水面はこんな感じ!!
錦鯉が生きていますね♪
思わず鯉の餌を投げ入れたくなる〜!
次回はいよいよ仕上げのお話。
川沿いの柳の工作やら、主人公のスバルサンバーの荷台の西瓜の話とか!!
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この記事へのコメント:
MACK : 2012/10/06 (土) 14:00:42
ジオラマとか、全然なのですが、やりたくなります(^ ^)
手元に数年前に買った黄色いつぶつぶのKATOのEZウオーターというのが、手付かずでありますのでちょっと試してみます。これは物としてはどうなんでしょうか?
いよいよ、石橋ジオラマも終わり近いんですね、続き楽しみにしております!
ふぁっとまん : 2012/10/06 (土) 16:36:43
清流の中の鯉・・素晴らしいですね感動しました
私も情景モデラーですが水表現は鬼門で・・何度か大失敗をやってます それがトラウマになってる部分もあると思いますが、今はマテリアルも進歩しているので再挑戦してみたいです。
次回の仕上げ編も大いに期待してます
木乃 : 2012/10/06 (土) 17:51:50
自分も今「滝」を使ったジオラマを制作中なので
アラーキーさんのブログは解りやすくてとても参考になります。
いつもボンドで安っぽい水表現してますが透明レジンにチャレンジしてみようと思います!
始祖猿 : 2012/10/06 (土) 20:00:35
最近アラーキーさんのブログを発見しまして、中身の濃い記事と作品のクオリティの高さに勝手に楽しませていただいております。
自分はフィギュア系統のモデラーなのですが、最近ジオラマに深く興味を持つようになりまして、いろいろと勉強をしております。
その世界観や背景のストーリーを演出する上で大いに活躍するジオラマを、自分もじっくり作ってみたくなりました。
これからもがんばってください!
ぴろんちょ左衛門之介久 : 2012/10/06 (土) 23:18:23
最近の透明レジンは経年でも黄色くなりにくいと聞きますが、、、
水面、美しいですねぇ~
いつか、そのうち私も、、、
逗逗 : 2012/10/07 (日) 00:27:43
コイがいることで、リアリティがぐっと増しますし、今度真似してみようかしらw
水表現って楽しいですよね。
いろいろ試行錯誤してやはりまだレジンには手が出ていませんでした。
クリアプラ板+クリアメディウムで何とかしちゃって来ましたが。。。
この透明感と水に近い屈折率を見ちゃうとやはりチャレンジしてみたくなっちゃいますね。
情景師・アラーキー : 2012/10/07 (日) 00:33:43
ジオラマは超楽しいですよ〜!
だけど自分で作るのはちょっと・・・という人は見るだけでもいいんですよ。
それも楽しみ方の一つです。
私もなるべく「まるで自分が作っているように」思える記事作りを心がけていますからね。
>KATOのEZウオーター
実は所有しているんですがまだ試していません。
使い勝手は良さそうですよ。簡単な水表現であれば十分に使えるのかもしれません。
問題は・・・耐久性ですかね。
情景師・アラーキー : 2012/10/07 (日) 01:31:27
HPで作品を拝見しましたが、かなり手だれのAFVモデラーですね!
素晴らしい作品の数々でした。どこかのサークルに所属していますかね?
水表現のトラウマ・・・分かります。私もそうでしたからね。
今は素材がいろいろとあってかなり簡単になりましたよ。
10分程で硬化する透明レジンもあるようです。
いつかチャレンジしてみてくださいませ。
情景師・アラーキー : 2012/10/07 (日) 10:07:43
『たまーに拝見してます。』・・・・「たまーに」っていうのが何か寂しさを感じます(笑)いや、うそうそ。私もたまーにしか書いていませんから。
ウルトラ系のジオラマを作る方ですね。いいですね。私も特撮大好きですから。
レジンを流さないで作る水表現もいろいろありますよ。
リキテックスの「スーパーヘビージェルメディウム』はかなり盛り上がった水表現がを作る事ができます。
以前紹介したゴーイングメリー号での荒波の波頭がこれを使った表現。
http://arakichi.blog.fc2.com/blog-category-8.html
特撮系のジオラマの場合はおそらくスケールが小さいので透明レジンを流さなくてもいい表現がいろいろあります。
情景師・アラーキー : 2012/10/07 (日) 10:16:10
今回ははじめましてのコメントを下さる人が多いですね。
うれしいかぎりです。
私のブログの右のバナーにカウンターが付いていますので毎日400人位の方が見て楽しんでいるのは知っています。でも、コメントはもちろんうれしいですよ。質問等なんでも書き込んでください。
フィギュア系の作品を作られているとか。キャラクター系なのでしょうか?
最近は 1/12スケールの分野がけっこう元気があって、日常を再現したフィギュア用の展示セットが熱いですね。あのハセガワが学校の机や会議室にある名机を販売しているのですがこれも面白そうなんですよね。
今回のこのジオラマのように日常を再現するのはとても楽しいですからね。
情景師・アラーキー : 2012/10/07 (日) 10:19:42
おお!今回の皆さんのさわやかな書き込みを見て、いつになく真面目なコメントじゃないですか!(笑)
川底作って、苔生やして、魚を入れるまではまるでアクアリュウムを作っているよう。
本当に楽しいですよ〜。
情景師・アラーキー : 2012/10/07 (日) 10:26:55
私も透明レジンばかりを作っている訳ではなく、その効果を考えて臨機応変に使い方を変えています。
今まで作った作品では「赤灯台の防波堤」
http://arakichi.blog.fc2.com/blog-category-13.html
しんかい6500の情景
http://arakichi.blog.fc2.com/blog-category-9.html
は透明アクリル+メディウムで水を構成しています。
けっこう見れる作品になりますね。
でもいつかは透明レジンためしてみてください!!
ツカサ : 2012/10/08 (月) 15:13:34
水のある情景、挑戦したくなってきました・・・
SYU : 2012/10/08 (月) 20:46:23
もちろん、造形は神がかって驚異の素晴らしさですが、いろいろな造形ブログで「造形は上手いだろうけど写真がなあ」と思うのが少なからずあると私は思うのです。
あの船が半分水没している絵なんて「太陽光で撮れば誰でも、ああ、みんな、なりますよ」と、仰るかもしれませんが、あにはからんや、あんな上手く見事に撮れないと私は思います。
驚くほど、とても素晴らしいです。
情景師・アラーキー : 2012/10/09 (火) 08:07:05
やはり水物は写真映えするんですよね。
ツカサさんのブログ拝見しました。ミニスケールから 1/35までトータルに作られている方なんですね。それに・・・なんとモデラーズ EXPOにも参加されるとか!
これは楽しみになってきましたね。会場で是非とも作品を見せてくださいませ。
出きれは水物のベースをくわえて(ニヤリ)
MASAKI : 2012/10/09 (火) 13:06:32
綺麗な水があるだけでジオラマの見どころになります。
固まりかけの時に爪楊枝でツンツンするというのは面白そうですが、失敗したら結構痛そうなもろ刃の剣のような気がしました。
今制作中のジオラマの川にもレジン流す予定ですが、何かを沈めておこうと思案中です。
せっかくの透明レジンなので中に何か埋め込まないと面白くないですよね?
情景師・アラーキー : 2012/10/09 (火) 22:37:09
>その写真の上手さです。
てへへ。ありがとうございます。いちお「アラーキー」という名前なんで(笑)
写真は好きですね。そもそも僕は特撮映画に影響されて、将来はそっちの道に進もうと思っていましたのでジオラマ作品の楽しみ方の終着点は「実写風撮影」にあると考えています。
その昔私が小学生の頃、タミヤの主催する AFVフォトコンテスト「パチ」に出したくてチャレンジしてみたのですが自宅にあるバカチョンカメラ(死語)で撮影した所、やはり接写が出来なくて断念しました。
デジタルカメラが発展してから接写機能が充実しているので高い接写レンズを買わなくてすみますし、本当に楽しく撮影する事ができます。私が使っているカメラはリコーの CX5。最新型は CX6ですが2万ぐらいで買えるコンパクトデジカメです!!
micanbaco : 2012/10/11 (木) 20:01:31
これで数年来停滞中の茅葺民家の模型に清らかな小川を配置する目処がたちました。
一見コリドラスっぽい鯉も(←失礼)水面上からみると本当に泳いでいるようです。
情景師・アラーキー : 2012/10/12 (金) 07:01:10
調度 MASAKIさんの大作でもレジンを流そうとしていますよね。
楽しんでくださいませ。
川の中に沈めるもの・・・・・どちらかといえば都市部に泣かれる川を作っているならばあまり沈んだ物は無いかなぁと思います。ガレキの一部が水面から飛び出ているのであればありですね。
川の表面ツンツン工作は難しくはありませんよ。試しにツンツンしてみてください♫
情景師・アラーキー : 2012/10/12 (金) 07:06:29
確かに川や水表現のレクチャーであまり見かけないんですよね。
それだけ「テクニック」として扱われていないのかもしれません。
>水面が真っ平らの動きが全く無い泥水だったり
そうそう、私もそれでいいのかなぁとず〜と思っていました。
特に乾燥後の表面張力で端がそり上がっているのもそのまま放置で完成させている作品をみるとガッカリしていました。
ちなみにそう成らないように乾燥後はその部分は削って修正しています。
透明レジンは他のレジンよりも堅いので修正はかなり難しいのですがやるのとやらないのとは大違いですもの。
透明レジンには10分で硬化するものもあるらしくちょっと調査してみます。
FURY : 2016/09/24 (土) 11:29:22
波の表現や、光の具合などを計算し製作されたこのダイオラマは
心に深く残りました。
私も、挑戦してみようと思います。