甘い西瓜の記憶が蘇るジオラマの話
いよいよ盆休みですね。
私の今の実家は千葉の習志野です。
しかし、ここは私が高校になってから住み始めた地なので「私の田舎!」と宣言出来る訳でもなく、正直さほど郷愁感はありません。。。。
転勤族だった私は、北は岩手県盛岡市、南は九州・鹿児島まで生まれて43年間に7県、日本を縦断する引っ越し人生を過ごして来ました。一地域に3年期限で引っ越しを強いられた転勤サイクルの中では各地のいろいろな思い出がありますが、特に九州は熊本、鹿児島、福岡と各地3年×3カ所=9年も滞在していたことと、父親の田舎が長崎だった事もあり、私の中で最も郷愁を感じる場所です。
夏の強い日差し、本州には少ないクマセミの鳴き声、夏祭り、甲子園のラジオ中継、赤い果肉の西瓜の甘い味・・・・・
脳の記憶を司る海馬の中には夏休みの思い出の風景=九州での各地の思い出がハッキリと昨日の事のように刻まれているのです。
川に掛かった古い石橋。それを渡る1台の軽トラック。
九州は熊本でよく見かける石橋のある風景です。
江戸時代から石組みの技術に長けていたここ熊本では400年近く経過しながらもびくともしない立派な石組みの橋や石垣が各地で見られます。
そう、この写真は私のブログのタイトルバックに使われているもの。
その写真には比較の指がありますのですで実写写真ではなくこれがジオラマだとお気づきですね!
この石橋は未だに現存する江戸時代からの石橋をモチーフにしています。
私が小学校に入学したのは熊本。築城の達人として知られる加藤清正の名作・熊本城の石垣の素晴らしさに感動して以来、歴史ある石組みの造形とその苔むした姿の魅力に取り付かれてしまいました。
今を思えばどんな小学1年生だったのか??(笑)
兎に角ダイナミックな石組みの造形には本当に魅力を感じます。
前回の記事で紹介していたアンコール王朝の遺跡もその延長にありますね。
石の表面にシミのように丸く広がる苔。
そしてその隙間から生えるツタやシダもいいアクセントになってこれも魅力的ですね。
このブログでも度々紹介している紙をレーザーカットした素材「紙創り」のシダです。
ツタはジョーフィックの「白樺のタネ」
http://store.shopping.yahoo.co.jp/sakatsu/162000000105.html
毎度の定番ですが、やはりいい感じに仕上がります。このタネを使った情景「てんとうむし」にて詳しく書かれています。
http://arakichi.blog.fc2.com/blog-category-16.html
そして川岸にゆれる柳の木。
手芸店で売られている「アスパラガスの葉」を使って作った柳です。木工用ボンドにしたしてしっとりとさせて、柳特有の葉の様子を再現しました。
雰囲気はでているでしょう?
主役のスバルサンバーは 1/32スケール。
これは模型雑誌・モデルカーズで企画・通販されていたガレージキットを改造したものです。
残念ながら今は絶版です。こういった 1/32のノスタルジックカーは旧LS、現在マイクロエースから発売されているオーナーズクラブシリーズが有名ですが、種類が限定されてしまいますので新鮮な息吹を感じますね。
これからももっと販売してほしいアイテムです。
橋の手前にある夏の記号の代名詞、ひまわりはこれも紙創りから販売されているもの。
これも使えるいい商品ですよ。
ただし、よりリアルにする為に花びらには、ドライフラワーの小さい花びらを移植しています。
背景のフロントガラスに反射した太陽光がかなりリアルでしょう?
川の中をよく見ると・・・なんと錦鯉が泳いでいます。
川の造形をする際に無着色で透明のまま仕上げるのが好きですから、こういった遊びがよく映えるんですよね。
スバルサンバー・トラック(キットではバンタイプなのでトラックタイプに改造したもの)にはこのジオラマの主人公の西瓜がたっぷりと搭載されています。
100円ショップで買い付けた木製の数珠のようなものを使って一つ一つグラデーション塗装を施して、黒筋を筆で書き込んでいます。荷台には藁を敷き詰めているのが昭和40年代という感じがします。
熊本は西瓜の産地。あの甘い西瓜の味が私の口の中に広がってきます。
夏の強い日差しがよくにあうジオラマ「西瓜の夏」。
夏の時期にぴったりなこの作品をこれからしばらくはこの制作記を記事にしようと思います。
<定期PR>
※2021年2月11日発売
2015年にジオラマ作家として独立してから5年間に受注した仕事をまとめた写真エッセイ集。今までのジオラマ本のように作り方のHow to 記事も盛り込みながら、それぞれの仕事をどのように受注してアウトプットしたかを綴ったビジネス本として執筆しました。
好きな事を仕事にしたいクリエイター志望の方へのヒントになれば!
※2019年4月10日発売
失われつつある昭和の駄菓子屋を1/24スケールで徹底的に作り込み、その作り方を図面、写真で超解説したジオラマHOW TO 本。和風日本家屋の構造解説でドールハウスや鉄道模型などのジオラマ作りの参考になります!
※2016年8月に発売された私の初のジオラマHow to写真集「作る!超リアルなジオラマ」
イラストと写真を織り交ぜて、ジオラマ作りの考え方や作り方、保存の仕方、写真撮影、SNSでのアピールの仕方など重箱の隅を突くように執筆した本です。現在6刷突入で2万冊突破で好評発売中です!
※2015年に発売された私の初の作品/エッセイ集「凄い!ジオラマ」をカラー写真2倍に増量+本の多さアップで生まれ変えた「凄い!ジオラマ[改]ジオラマ作りの楽しさを文章と写真で楽しめる本です!2018年11月発売
※このBlogをスマートフォンでご覧の方、スマートフォン表示ではなく、「PCモード表示」にすると、過去の記事の検索や、問い合わせの為のメール送信のフォームがご覧いただけます。
この記事へのコメント:
sai : 2012/08/10 (金) 02:34:22
yukiyuki : 2012/08/10 (金) 11:26:46
川の中に魚、とっても芸が細かいっす。
是非、川の作り方や魚の配置方法など、教えてほしいです。
スイカも見事!!
この夏にアラーキーさんの新作が生まれるのでしょうか?
楽しみです。
たにーちょ : 2012/08/10 (金) 18:39:22
今後の制作記楽しみにしています^^
情景師・アラーキー : 2012/08/10 (金) 23:24:41
実はこれはカーモデル雑誌「モデルカーズ」の作例として制作したものなんですが、あの雑誌も一般的には「ミニカー雑誌」と思われているところもあり、しっかりとしたプラモデル作品なんかも掲載されているんです。
そんななかでも私は不定期連載で人と車のつながりとしてのジオラマを発表しているんですが、そのシリーズの中の一つなんです。
不定期とかいいつつ、声もかからなくなって1年以上経過してしまいましたのでもう幽霊部員になってしまっています(苦笑)
月刊などの模型雑誌に掲載された作品はその雑誌が売られている間はクローズアップされますが、販売が終了してしまった後には中古本という形以外では再び目に触れる機会はありません。
しかしネットの場合はひょんな検索の切っ掛けで人目に触れるチャンスがあり、それはそれは作品にとってもモデラーにとっても嬉しい事でございます。
幸い、そもそも模型雑誌用だったので途中写真はいろいろと残っておりますので楽しみにしていてくださいませ!
情景師・アラーキー : 2012/08/10 (金) 23:28:30
我が家はかみさんの仕事の都合上、彼女は通常の盆休みはないんでね。
かわいそうだけど、9月に入って遅れた夏休みを取るという感じ。
だから毎年、この時期は私は家に籠って何かしらの制作をしているという制作三昧なんですわ。それを幸せと感じるのか、不幸と感じるのか?(笑)
今後の記事をお楽しみに〜。
情景師・アラーキー : 2012/08/10 (金) 23:32:07
>ずっとブログでとりあげられるのを心待ちにして
→やだな〜、言ってくださいよ〜。
とかいいいつも実はいろいろと季節のタイミングと会わせてみたり、ワンフェス開催のタイミングでワンフェスのネタをつなげるとか、掲載スケジュールを考えながらやっていたりするんですよ。
しかし、リクエストはいつでも受け付けます!
コメント欄でもいいですし、メールフォームでもいいので
「こんな制作のネタを書いて欲しい」と要望をどしどしと受け付けま〜す♫
8va.oga : 2012/08/12 (日) 06:33:11
最後、ダメ押しで西瓜にやられました
植物はもちろんのこと 水の表現の素晴らしいこと・・・
僕は「モデラー以外にも、一般の方、特にお年寄りやお子さんが足を止めてくれる作品」を目指しているんですが・・・まさにこの作品はそれを体現していただいたような・・・うまい言葉が見つかりません
ノスタルジーも感じますし・・・長く眺められる作品ですね
情景師・アラーキー : 2012/08/12 (日) 07:16:45
西瓜の運搬のジオラマはいつかやりたいと思っていたネタ。荷台にダイレクトに積んだ姿は「本当に大丈夫?」って。農家が近くの農協に運ぶまでの僅かな道での運搬なんですけど、あの頃はおおらかな時代でした。
私の目指すジオラマはオガさんが言うように「ジオラマに興味の無い人にも解るコンセプト」というのを課題にしています。それは対戦中のジオラマでも、ガンダムのジオラマでもすべて同じですね。
自分で楽しんで作った自慢の作品はその楽しさは見る人にも感染します。
この作品は私が作りたいと思ったチャレンジも数多く含まれています。
やはり特に「石橋」に対する愛情を感じていただけると思います。
オガさんも作れますよ。
自分で楽しんで作ったならばね。
ぴろんちょ左衛門之介久 : 2012/08/13 (月) 04:20:49
カビ(?)みたいなのが生えた石の塗装とか、石組みの隙間に生えるツル植物とか、、、最高っス!!!
情景師・アラーキー : 2012/08/13 (月) 06:32:29
ほほう!もしかしたら初めて「まじめな」コメントをもらったかもしれません(爆)
やれば出来るじゃないですか〜。
石垣に生える丸い苔は「ヘリトリゴケ」というんですよ。あいつを書き込むだけでかなりリアルになるんですよね。かわいいヤツです♫
てんどう : 2012/09/02 (日) 04:36:22
感動しました。
勉強させていただきます。
情景師・アラーキー : 2012/09/02 (日) 06:39:42
お褒めの言葉ありがとうございます。
まぁ今回のこの作品はしぶちんですが、私は雑食ジオラマビルダーなんでガンプラももちろん作っています。過去作品にもいろいろあるので見てみてくださいね。
いろいろネタを公開しておりますのでちょいちょい覗いてみてくださいませ!
kacho : 2013/03/20 (水) 22:04:28
レイアウトの参考にと、ウロウロしていたら、アラーキーさんのとても
作りものだとは思えない、まさに実写真としか見えないすばらしい作品に遭遇しました。
ただただ感動の一言です。
私もいずれは、アラーキーさんの域まで....は無理でしょうが。
もしよければ、「石橋」は何で出来ているか、おしえていただけないでしょうか?
聞いたところで、真似は出来ないでしょうが、頑張って私のレイアウトに取り入れたいのです。
匿名で : 2015/11/03 (火) 15:59:11
ただ途中なんとはなしに違和感が。それはナンバープレートです。
昔のナンバープレートは全て四桁の数字が入っていました。
【返信】情景師アラーキー : 2015/11/04 (水) 12:01:31
コメントありがとうございます。
ナンバープレートの件ですが、私が調べたかぎりは当時はすべて4桁とは限りませんが。。。。
桁がたりない所は「・」で代用しています。
確かに、「ひらがな」の表記を忘れていますね。
ちなみに、この写真のプレートを参考にして当時は作ったと思います。
http://img02.ti-da.net/usr/churasan8888/m2.JPG
匿名 : 2015/11/04 (水) 12:40:09
http://www.k5.dion.ne.jp/~nplate/misc/m50_bango.html
何しろ年寄りなので昔のことだけ覚えております。
重箱の隅を突いて申し訳ありませんでした。