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スチレンボードで建物を造る!


ジオラマ制作において欠かせない作業の一つが「風景を作り出す」事です。

これは本当に楽しい工作♫

欧州の街角だったり、日本の古い建物だったり、破壊された未来の都市だったり、湿度が高いジャングルだったり・・

自分が訪れたことのない世界を自らの手で産み出せる、しかもそれはあたかもそこに存在したかのように!

これは映画監督と肩を並べられる創造性のある行為だと思います。
世界観を丸ごと製作するロケセット、そしてそのセットで演じるアクター。
主役の戦車だったりロボットだったり。配置一つ変わるだけでその映画のよしあしが変わるようにジオラマの完成度も変わってしまうんです。奥が本当に深い世界です。

さて、その大切な背景を作り出す為の How to として、もっとも気楽に造れるものは地面の製作です。

今回はその地面や建物の製作をする際に欠かせない「スチレンボード」を使っ工作法を解説します。

用意するのはこれ

●スチレンボード(約3mm〜5mm)
●ボールペン(もしくは楊子)
●モデリングペースト

●スチレンボードはちょっと堅い発泡スチロールの板状のもの。建築模型で使われる事の多い素材です。
一般的には両面に紙が貼られているタイプが多いのですが、今回はスチロール製の板だけのタイプを使います。
これはタミヤ製のものをお勧めします。いろいろ使ってみたのですがきめの細かさはピカイチです!



●ボールペンは一般的なもの(油性タイプ/注:水性タイプではないもの)がオススメ。
楊子を使う場合はより小さいスケールか、細かい造形の場合はそれを使います。ピンバイスの先端に楊子の先を差し込むと使いやすいでしょう。(補足:より細かい造形をしたい場合は、マチ針などの金属製のピンをピンバイスなどの治具に差し込んで使うと更に細かい造形が出来ます)

●モデリングペーストはリキテックスから発売されている石膏をペースト状にしたものです。
普段はアクリル塗料にまぜて、油絵特有の盛り上がった筆タッチを再現するための画材です。しかしジオラマには欠かせない材料ですね。



さて、制作に入ります。

普通はもっと取っ組みやすい地面などの制作を紹介すべきですが制作途中のいい写真が見つからなかったので、制作応用が利いて、さらにキャッチーな「建物」の制作を紹介します。

今回は 1/72スケールのドイツの建物です。

いわゆる「ロマンチック街道」と呼ばれる有名な観光地にあるシンボル的な建物です。
資料はネットの画像検索と、旅行会社のパンフレット。私はいつもこんな資料集めです。
特殊な建築雑誌など万人が手に入りにくい資料で造りました!!となると、その時点で高いハードルが設定されたように思えて来ますからね。

ドイツろまん




さて、写真資料を元に、おおよその寸法を割り出して建物の4面をスチレンボードに直接けがいていきます。

西洋の建物はお天井高がおおよそ3m〜3.5mm程なので スケール換算して建物の高さを割り出して、後は窓の大きさとか位置を決めるとラフに図面を引く感覚でけがきます。
その際にボールペンを使うのですが、それは先端のボールがスチレンボードを程よく押し付けて彫刻する事ができるのです。

これは石たたみの地面でも、煉瓦の壁でも、コンクリートブロックの壁でも作り方は一緒ですね。

建物02



けがき終ったものにモデリングペーストを塗って行きます。

あまり厚めに塗ると折角のディテールが埋まってしまいますのであくまでも薄く。
表面が漆喰仕上げだったり、コンクリートだったりと凸凹している表面では歯ブラシで叩き付けるように湿布していくといいでしょう。

地面や壁の制作ではこれであとはアクリル系の塗料で塗装すれば完成となります。

建物03


今回は建物の制作なので、あとは応用編として屋根の作り方をちょっとだけ紹介しておきます。

この屋根は日本瓦だったり西洋瓦だったり、プラスチックのプレス加工品として「プラストラクト社」のものを使うと非常に完成度の高い屋根を気楽に造る事が出来ます。


しかし、先端を丸く加工したスレート屋根を反り返った特殊な屋根形状の今回の塔のような屋根では自作するしか方法がありません。

して、今回は私の得意技「ペーパークラフト」での制作を試みてみます。

屋根の形状は何となくこれぐらいかな・・・という方法で何度かチャレンジして形状を作り出しました(笑)
ここら辺は建築系に強い人は計算で出してしまうんでしょうけど、私はアナログ派でして。。。

接着はゼリー状の瞬間接着剤がいいでしょう。紙だから木工ボンドでいいじゃん!と思えますが、これは水分が多く含まれているので紙が変形するのと乾燥時間が長いので作業が進みづらい事がネックです。


建物06


半円の繰り返しはパソコンのイラストレーターソフトを使って描き、それを厚紙にプリントします。
パソコンが無い方は根性で描けばいいでしょう(笑)

建物07JPG



この小さいパーツを切り出す作業がもう大変....この作業中は腱鞘炎になってしまいましたね。
でも、私、この手の細かい繰り返し作業は結構好きです♫


建物08JPG



屋根も完成後はモデリングペーストを塗ります。。。これで塗装下地はばっちり!

※補足 建物の四つ角が他の面よりも段差がついております。これは組み上げてみた際に、ぺたっとした印象に思えたので、その部分だけ後から追加しております。

建物010



そして、アクリル塗料で塗装してエナメル系の塗料をちょっと使って仕上げます。
ここで注意点。
スチレンボートはラッカー塗料とエナメル塗料では溶けてしまうんです。モデリングペーストをしっかりと湿布してあればコーティング出来ていることになりますので下地を犯すことは少ないですが、使わないにこした事はないでしょう。

建物の塗装は基本色を塗った後に、退色した様子を再現する為に「バフ」系の色でさっと縦方向に筋を入れたり、
建物のふもとは雨が跳ね返って出来た染みなどを塗装して仕上げます。

建物 011



屋根もいい感じでしょう?

建物012




このスチレンボートの工作は人工物である風景を産み出す手法の基本の中の基本。
これの応用でいろいろなシーンを作り出す事ができます。

次回はこの応用で造られた石たたみや煉瓦などのテクスチャーの造り分けを紹介します!



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この記事へのコメント:

MASAKI : 2012/06/08 (金) 21:12:59

屋根の素材に紙!
意外と盲点でした。
確かにそれであれば作りやすそうですね。

ただいま次回作検討中ですのでスチレンボードの建物など入れてみることも考えてみます。

屋根裏部屋の男 : 2012/06/09 (土) 12:55:16

何時もためになる記事をありがとうございます^^。

鉄道模型の各メーカーから様々な「建物」が販売されておりますが、それらを買い揃えると結構なお値段になりますし・・・・

手を加えたとしても、同じような情景になってしまいますのでねぇ~!

こうして建物を自作する方法をマスターすれば、スペースに合わせてサイズ等も自在に調整出来ますし、オリジナリティー溢れる作品になりますからやってみたい分野ですね。

何より経済的(笑)

何時もアラーキーさんの手法公開が大変参考になります。

yukiyuki : 2012/06/09 (土) 22:14:30

おお!
まさに知りたかった内容がテンコ盛りっす。
アクリル塗料ってタミヤの模型用塗料のことですよね?
それともアクリルガッシュのことかな?(なんか懐かしいネーミングだなぁ~)
これからも是非参考にさせて下さい。

先日、スタイロフォームを始めて入手しました。
あとはモデリングペーストってやつを買ってみようかな。
ジムニー完成したら、こちらのブログを参考に地面作ってみますね!
始めての地面、うまく作れるだろうか・・・(^^;)

ぴろんちょ左衛門之介久 : 2012/06/10 (日) 09:21:56

モデリングペイストというのを買うて来よう。

で、何に使うかだな。

マテリアル(屋根瓦が紙とか)紹介、工作手順も嬉しい

アラーキー : 2012/06/10 (日) 19:36:37

●→MASAKIさん

紙の利点はやはり加工がしやすい事。この屋根の切り出しも同じ薄さのプラ板だったら腱鞘炎どころの騒ぎではすまされないのかもしれません。サーフェイサーでコーティングしてしまえば、元がプラだろうが木だろうが紙だろうが同じですからね。

建築模型はこのスチレンボードで制作するのが基本ですから使い方は同じです!

アラーキー : 2012/06/10 (日) 19:40:03

●→屋根さん、

1/150のスケールの鉄道模型サイズであれば、ペーパーククラフトの型紙が多くネット等で手に入れられますし、量産は可能ですね。しかし、あまりこの手法だと、ディテールが・・・やはり 1/100ぐらいが小ささの限界かな?
煉瓦建築だとかはつぶれてしまいそうですしね。

まぁいろいろ試してみてください。

アラーキー : 2012/06/10 (日) 19:43:42

●→yukiyuki さん

参考になった??

ジムニーの情景とか言っていたから、この方法よりもアスファルト地面の制作方法とかの方が参考になるかもね。また制作方法紹介するね。

アクリルはタミヤのもので OK!!

普段使っているのはラッカー系なのかな?エアブラシ塗装ならばそんなに塗装膜があつくないから下地を犯す事は少ないから大丈夫といえば大丈夫。
普段使わない塗料を買い集めるのは大変だからね。

アラーキー : 2012/06/10 (日) 19:46:21

●ぴろんちょ さん

モデリングペーストはまぁ持っていて損はしない素材。簡単な地面を造る際には必要だから「何に使うかだな。」と悩まなくてもいい(笑)

今後のこちらの記事でも必ず出てくる素材。

もちろんリキテックスからは何ももらっておりません!

ラノ : 2012/06/12 (火) 00:18:57

はじめまして。

ジオラマを作ってみようと思い色々探していたところこちらの記事に辿りつきました。
記事にでてきた材料をそろえて挑戦してみたいと思います。

表面の質感が凄過ぎてどうやっているのか…
開いている窓や手すりなども凄い細かいですね。

アラーキー : 2012/06/12 (火) 00:36:16

●→

ラノさんこんばんわ、いらっしゃいませ!

ジオラマを作ってみよう!ということはこれからチャレンジするってことですね。

いいですね、そおいうお方。大歓迎ですよ。
ガンダムから錆びて捨てられた車までなんでもそろえていまっせ、お客さん!

窓がちょっと開いているという所、よくぞ見てくれました。ラノさんセンスありますよ(笑)。この「ちょっと開いている」ってところは実は人間の心理的にも「その奥になりかありそうだな」という「そそる」導引になるわけです。
このジオラマの場合はちらりと見えている大型戦車が建物にぶち当たって振動で窓が開いているっていうシチュエーションを演出しているのですが、見る人がいろいろなドラマを想像させるのがより魅力的なジオラマだと僕は考えます。

もしもいろいろと解らない事があれば質問ぶつけてください!

こちらのコメント欄でもいいですし、左横にある「メールフォーム」から直接私にメールが送れるようになっておりますので、なるべく詳しくアドバイス出来ると思います。

ジオラマ楽しいですよ〜!!

クリスタルボーイ : 2012/06/14 (木) 21:30:15

この前、アーマーモデリングのバックナンバーオクで落札しました。
こうやって作ってるんですね。  
悪役1号、現在製作中ですが魅力的な戦車ですね。

アラーキー : 2012/06/15 (金) 06:45:00

●クリスタルボーイさん

おお!手に入れましたか!
・・・何年前だったからしら。

私が本格的に作例を造った最初の一歩。この作品が認められてアーマーから定期的に依頼が来るようになりまりました。ただし・・・すべて架空戦車だったり映画に登場したAFVだったり(笑)

悪役1号は楽しいキットですよね。もう一度がっつり作ってみたいキットです。
完成を楽しみにしています。

秋冬 : 2015/01/14 (水) 23:23:58

はじめまして。タモリ倶楽部で、荒木さんの作品見て、作りたくなった者です。
質問なんですが、寸法ってどうやっているのですか?
1/48のイングラムに、ビルのジオラマ作りたくて。
よろしくお願いします。

【返信】情景師・アラーキー : 2015/01/14 (水) 23:42:18

>秋冬さんこんばんわ!

TV番組を見て作りたくなった!!

す、すばらしい♬そういうコメントをいただけると本当にうれしいですね。

さて、ビルを作りたいとの事ですが、もっとも簡単な方法ですと
Googleの画像検索で「ビル 4面図」と入力するといろいろなビルの図面が出て来ます。
そのなかでイメージがあうものをチョイスしてご自分でビルをデザインしてみてください。寸法はおおよそ、ビルの1階の天井高さは3000mmなので1/48スケールですと48で割って=62.5mmという事になります。その寸法でビルの図面をかいてみてください。

この画像がシンプルなビルの図面としては参考になると思います。
http://blog-imgs-31.fc2.com/t/a/k/takadakomuten/20120112204325e04.jpg

ユッピー : 2017/11/27 (月) 09:56:53

投稿ありがとうございます。

1つ質問です。 建物の四角部分が、他の面に比べて盛り上がっていると思うのですが、それはどのように表現したのでしょうか?
図面を作成している時はまだ平面だと思うのですが…

素人で申し訳ございません。

【返信】情景師・アラーキー : 2017/11/27 (月) 11:33:01

ゆっぴーさんへ

解りにくい説明ですみません。先ほど書き直しました。建物を組んで俯瞰した時に、全体的にぺったりした印象に思えたので、角の石組みの彫刻の部分だけ、1mm厚ぐらいのスチレンボードで厚みをプラスして制作しています。最初の計画とはちがい、作りながらプラスしたり、マイナスしたりとその繰り返しが良い作品に繋がります。

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プロフィール

情景師・アラーキー

Author:情景師・アラーキー
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.
■ 情景作家
■ 1969年生 居住地:東京・杉並 

「日常にあふれるさりげない光景」を立体化する事が得意なオールラウンドジオラマ作家。昭和ノスタルジーからアニメシーン再現まで製作範囲の守備範囲は無限。むしろ挑んだ事がない題材を与えられると燃えるタイプです。

「生み出すものに魂を込めて作る職人のようにありたい」・・・と願って「情景師」を名乗っています。

<過去の作例活動経歴>
●電撃ホビーマガジン
●電撃スケールマガジン
●モデルグラフィックス
●アーマーモデリング
●モデルカーズ
●パンツァーグラフ
●エクストラマガジン
(スペインの模型雑誌)

<<ジオラマ制作随時承ります>>
(製作事例:CM、テレビ撮影用、展示会用、トイの商品開発用、企業ノベルティー等)
・ジオラマ制作についての相談&質問もお答えします
・展示会等での作品貸し出しもしております。
・TV,雑誌,Web取材等の随時受付中。
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・タモリ倶楽部(テレビ朝日)
・怒り新党(テレビ朝日)
・情報ライブミヤネ屋(TBS)
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・lifeサプリ(BS日テレ)
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