白い白いプラ板の彫刻!!(しんかい6500支援母船・よこすか制作記)
さて、前回の日記で紹介したハセガワ製の1/72しんかい6500は単品での紹介でしたが、偉そうに「情景師」をうたっている私ですからまさかまさかそのままでは終りません!。
船内も再現されていて緻密なディテールの1/48スケールバンダイ製ではなく、小さいハセガワの1/72をチョイスした理由は・・・
企んでいるとあるジオラマに組み込みやすいから♪。
おそらく皆が想像する潜水艦のジオラマって、箱絵にもあるような深海の風景でしょう。
おそらく今後の模型各誌はそんな情景を発表するでしょうね。
だけど天の邪鬼モデラー・アラーキーは人と違う事が大好き!!
あえて水上でのしんかい6500の活躍をジオラマ化したい!!
(これってアオシマのマグロ漁船を使った造船所のジオラマの発想と同じですね、ムフフ)
という事で
今回はものすごくハードルの高いスクラッチ作品でジオラマを構成する事にチャレンジしました!!
しんかい6500を所有する独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC ジャムステック)ではこの潜水艦を現地で支援するための母船として「よこすか」と呼ばれる特殊専用船を所有しております。
これはガンダムを支援するいわば「ホワイトベース」と比喩すると解りやすいでしょう(笑)。
http://www.jamstec.go.jp/j/index.html
汎用船に後部甲板には垂直に切り立ったシャッター付き格納庫。一見すると海上自衛隊のイージス艦のデザインに似ていなくもないフォルムがかっちょいい!。
しかしこの船のもっとも魅力的な特徴は・・・他の船で見た事の無い巨大な門型のクレーン!!。
これがものすごくかっこいい!!
ザ・無骨デザイン!!
漢らしい!!
ものすごくごちゃごちゃしている形、見ているだけでクラクラします。
こういう工業的な造形って魅力的なんですよね。。。
大量生産されているものではなくコレしか存在しない特別な形。
なんでそういう形になったのか写真をガン見しても良く解らない非常に複雑な形。
これはモデラーの腕がうなりますね〜。
兎に角、超難関なスクラッチ作品ですし、部品の勘合を緻密に計算しながら作って行かないとこの手のものは成功しません。
ゆえに、図面は必要。
でも・・・やはり現役の船は機密情報も多いために図面が何所にもありません。
今回、模型雑誌からの依頼だった故に担当編集者に頼んで現地に取材に行ってもらい詳細な写真を入手する事ができました!
図面を書く為にはなるべくパースがつかない真正面からの写真必要なんが、残念ながらそれらの写真は皆無だったので結果として役に立ったのはネットの画像検索で探し当てたどなたかのブログに掲載された真後ろと側面の写真でした。
素晴らしいネット社会!!
それらの写真から比率を計算して1/72スケールで図面を書き出したました!
実の私の本職はとあるメーカーで家電製品のデザイナーをしていますので日頃は3Dソフトで図面を書いておりますが、本格的な図面ソフトで作ってしまうと皆さんがなんの参考にもなりませんので、今回のこれらの図面は2次元平面でのイラストレーターソフトで書いてみました。簡単な四角を寸法入力で描くだけのソフトです。
結構簡単なのでまぁ手書きでもいいんですけどね。今回はこの門型のクレーンが動きますから部品の干渉もこの時点でチェックできます。
さて、あとはこれらの図面に合わせて切り出して接着、切り出して接着の繰り返し・・・
けっこうこの作業の繰り返しって毎日少しずつ積み上げるように造られますので単調作業なんですが面白い。
でも作っても作ってもまだまだ作らないといけない部品ばかり。。。。
毎日「この様子だと絶対に間に合わない」のプレッシャーで押しつぶされそうになりながら、でもダッシュして造れる訳ではありませんので牛歩の歩みで作り上げて行くしかありません。流石に私も無口になってしまって、カミサンにキレられました(泣)
こうして苦労して作り上げた塗装前の貴重なショットを公開します!!
ビューティフォー!!!
ほぼ完全スクラッチの白い白いプラ板に固まりです。
フルスクラッチモデラーはやっぱりこの状態を眺めるのがもっとも悦に入る時間ですね。
いや〜よくやったよ。
大抵のモデラーさんはこの状態をみると妙にテンションがあがる筈(笑)。
自分で言うのもなんですが、美しいですよね
しかし...残念ながらこれらの写真は掲載された模型誌では小さな小さなサムネイルで紹介されていて・・・
ああ、もったいない。
モデラーのツボをもう少し解ってほしかったなぁ。
掲載ページは他のページとの兼ね合いで少なくなってしまい折角造ったものが小さい写真でしか構成されなかったならなそれを造ったモデラーもそれを見る読者も残念ですからね。
実は・・・この写真、納品時間のわずか12時間まえの写真!!
この後に怒濤の塗装作業でシンナー付けの夜を過ごし(もちろん徹夜)納品前1時間まえに完成するという本当にギリギリな完成劇が待っているのでした。
さて、次号はようやく完成写真を大公開!!
迫力ある野外撮影をご披露いたします!!
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この記事へのコメント:
チアキ・バチスタ!! : 2012/01/26 (木) 23:30:14
すごいなぁ、これは.....。
完成品もすごかったけど、
塗装前のこの状態でも見て楽しめるような....。
写真からよくぞここまで作り込めるものです。
アラーキー : 2012/01/27 (金) 07:13:10
ども。
写真からここまで起こすのは本当に苦難の連続。
しかも資料が少ないですからね。
斜めアングルの写真は確実に寸法が狂いますから困ります。
こういう解析の場合はそれを作っているのはやなり人なので、自分が設計者の立場ならどうしてこの大きさと形が必要だったのかと想像して寸法を割り出します。
長い造形物だと根元で0.1mm狂ったら先端ではけっこうな大きさの狂いが生じますから大変。
あとは・・・・「モデラーの神」が降りてくるのを待つしかありませんね(笑)
まさぼん : 2012/01/27 (金) 10:02:54
このプラ板画像・・・たまりません!
パソコン観ながら口をポカーンって開けちゃってる自分がいます(笑)。
限られた時間のなかで、これほどの作り込み、さらにシンナー漬けの一夜で塗装もやられてしまうとは。。。!
雑誌のフォローをブログで見られるって読者やファンにとってはすごくありがたいです^^ありがとうございます!
ほにほに : 2012/01/27 (金) 12:29:59
プロカメラマンによるステキな写真だけ雑誌で制作過程や「ココ見て!」はモデラーさん自身が紹介したほうが、見るほうも参考になります。
読者からしたら、制作過程の写真をもっと見たいと思うんですよね〜。
ただ今回のアラーキーさんの作品は真似する気が起こらないので(凄過ぎてw)、過程の写真よりもいろんな視点で撮った写真が見たいです〜o(^▽^)o
実物見られるのが一番いいんですけどね…
屋根裏部屋の男 : 2012/01/27 (金) 16:57:02
なので、アラーキーさんの作例は何時もwebで・・・・です(笑)
業界では色々とあり大変でしょうが、友達の一人として応援しております!
野外撮影の完成写真公開に期待しとります(^^ゞ
あ、リベンジもぉ~(謎爆
yukiyuki(bigwave) : 2012/01/27 (金) 22:27:34
純粋にスゴイっす。
模型雑誌?どの雑誌だろう?
バンダイからも発売されているんだ~。
「しんかい6500」・・・かなり以外なチョイスですね。
自分の知っているアラーキーさんは、キーボードを打つのも一苦労なイメージがあったのですが、もう怖いもん無しですね!w
6月の模型展示会?でお会いできるのを楽しみにしています。
展示会の詳細情報教えて下さいね!
>とあるメーカー
そのビルの15階に月1回程度、打ち合わせで行っていますよん。
MASAKI : 2012/01/28 (土) 00:16:22
これを作る際のプラ板って厚みどのくらいのものを使用しているんですか?(特に大きそうなパーツの場合)
厚いと切り出すだけでも一苦労ですよね。
ねこ : 2012/01/28 (土) 00:30:47
4枚目の船上からクレーンを見上げたアングルといい・・
最後の各パーツごとに並んだ写真といい・・
シリンダーのボルト周りなんて・・もう・・・
ヾ(〃☆ω☆)ノうっきゃあぁ~~~♪
たまりませんw
アラーキー : 2012/01/28 (土) 07:23:39
どもども。
実はここまでのスクラッチ作品って造った事がなかったんですよ。
自分で改めて見ても「おい、あの時の自分、ようやったなぁ」と感心します(笑)
しかし・・・小学校の時に方眼紙を切り抜いて工作した技術となんら代わりはありません。今回は型取りして量産したり、ヒートプレスで薄肉成形したり、有機的な面構成の造形をしたりとスクラッチ技術のハードルの高い工作はなくて
「直線切り+接着」で出来てしまう造形なので、まさぽんさんの自慢のガンプラワールドカップ・ジュニア部門日本一のお嬢さんでも造れますよ!!
アラーキー : 2012/01/28 (土) 07:31:01
タミヤニュースはほぼ白黒写真で構成されている企業機関誌ですが、そこに掲載されているジオラマや世界各地の戦争博物館などの写真を穴の空く程眺めるうちに・・・
なぜかカラーを感じる程に想像力が増していました(笑)
それが近年、新号が発売された後にタミヤのHPにいくと、なんと紙面に出ていた写真のオリジナルのカラー写真が掲載されていて、いち早く雑誌とWebとのコラボレーションを実現していたんですよ。
最近はiPadのような機器でHPの写真も拡大縮小が自由に出来るようになりましたので
雑誌に載った写真を自由に拡大して参考にする事が出来るの時代になりました。
Webとの連携・・・それが一番、制作したモデラーにとってもそれを見る読者にとってもハッピーな方法ですね!
アラーキー : 2012/01/28 (土) 07:34:24
Web上の模型制作記事ですと何所からでもいつでも検索で調べてみる事が出来ますからやはり利点は多いですよ。
故に責任もって挑まなければなりませんけどね。
>業界では色々とあり大変でしょうが
→あれ?何の事???(し〜〜〜〜!!!)
アラーキー : 2012/01/28 (土) 07:51:33
一年でもっとも忙しい師走の時期に1ヶ月で作り上げたから凄いでしょ!!
大学の頃に持っていた課題制作技術で造れちゃうんだけどね(笑)。
>自分の知っているアラーキーさんは、キーボードを打つのも一苦労なイメージがあったのですが
→マジで?そんなイメージ???
でもあの頃は全然パソコンが普及していなかったからね。Macも30〜50万ぐらいしていたんじゃなかな?。携帯も普及していなかった世代の最後のアナログ大学生。待ち合わせとか「伝言ダイヤル」頼みだもんね。
>そのビルの15階に月1回程度、打ち合わせで行っていますよん。
→え?ほんと〜15階って・・・診療所?
アラーキー : 2012/01/28 (土) 08:02:59
>これを作る際のプラ板って厚みどのくらいのものを使用しているんですか?
→
・船体の大きな部分は1.5mm厚。中に幾重もの断面のリブが入っています。
・クレーンは1mm厚。
・その他の造形は0.5mm、0.3mmの混合。
全てが中空の箱構造なのでかなり軽く出来ていますね。
強度は必要ありませんが、しっかり作っておかないとゆがみが生じて精度が出なくなります。
造り始めるとなんぼでもディテール入れたくなりますよ。
もう2度と造りたくない・・・・
とは思いません。苦しいけど(それは時間がないという問題)楽しかった!!
アラーキー : 2012/01/28 (土) 08:09:32
>シリンダーのボルト周りなんて・・もう・・・
→よく見ているなぁ〜
そんな所を発見するねこさんって・・・まぁらしいですね(笑)
やはりこの白い造形のままの方が私は好きでしたね。
この船って現行船なので塗ってしまうとけっこう普通。しかも博物館にかざってあるような綺麗なミュージアムモデルのようになっているんですよ。
錆もほとんどありませんしね。
塗装してしまうとけっこう普通・・・改造&スクラッチモデラーの苦悩でしょうね。
カズジイ : 2012/01/28 (土) 15:00:52
あの短時間に凄いものを作りましたね。私なら半年は欲しいです。マジで。
取材の記事も気合が入っていましたね。その分アラーキーさんにも大きな期待がかかっていたのでしょうね。
私も広告代理店で発注する方、受ける方と両方の立場を経験しましたが、中々難しいですよね。相手の気持ちって分かってるようで実は分かってなかったりして。わたしならアラーキーさんの仕事量を考えると絶賛の言葉しかでませんが・・・・その一言で救われるんですがねぇ~
この後もいじくる予定ですか?是非「よこすか」に取材にいって完璧な作品を残してください。
アラーキー : 2012/01/28 (土) 21:06:37
我が道をゆくモデルグラッフィクスにくらべて、電撃ホビーマガジンとホビージャパンでの屋台骨を支えているのは今はガンプラなどのアニメプラモがメイン。
そんな中であれだけの特集を組んだ電撃ホビーマガジンはあっぱれと言えますね!
そして期待していたのはもちろん痛感します。
でもベクトルがちょっと違う方向に向いちゃったのかな?
つまらない子供の喧嘩みたいなものと考えますね。
私も言われっぱなしはかわいそうなんで次のブログ記事でいろいろ仕掛けるつもりです。
もちろん、このジオラマは今後もいじる予定ですよ。
その進化の過程もいずれブログで公開していきますね。