失われた新地駅を、再び!


2011年3月11日。

日本人にとって、忘れられない、いや忘れてはいけない日となりました。

東日本大震災です。

あれから5年。

ちょうど1年前のこの頃に、震災被害地・福島県新地町の復興推進課から「ジオラマで震災復興が出来ないか?」という相談を受けました。ジオラマで復興???

私は以前から、被災した地でのボランティア活動など、何かしらの復興支援をしたいと思っていましたが、震災のあったその頃の仕事の多忙さを理由に、結果として募金援助という形でしか支援出来ていない自分に、何か後ろめたさを感じていました。それが、ようやく私にしか出来ない方法で支援できるかもしれない。ジオラマ作家として独立して直ぐに入って来た仕事であり、それまでのサラリーマンとジオラマ作家の2足の草鞋では決して出来ない大きな意義のある仕事だと思いました。何か運命的な繋がりを感じて、悩むこと無く快諾しました。

徐々にですがインフラが整いつつある被災地で、ハードだけではなくソフト(心)を復興させるという国の復興プランである「心の復興事業」がこのプロジェクトの趣旨です。被災地の各自治体が独自に考えた事業プランを国に申請して、許可降りたものから国家プロジェクトの1つとして実行されます。とても責任のある大きな仕事。半年かけて話し合い、2つの大きな柱で進めることになりました。

1つは、ジオラマワークショップ。

こちらは津波で街の様子がガラリと変り、仮設住宅、そして移転地での新生活で人々の関わりが変化したことで、地域の繋がりが無くなってしまった町の人々に、「ジオラマ」作りの時間を提供して、新しいコミュニケーションツール1つとして役に立てていただけたらという狙いです。

こちらは7〜9月の間に3回のワークショップを開催して、ジオラマを作ってもらうのですが、ほとんど作った事がない素人さんに、短時間で完成させる題材を見つけるのが課題でした。私は当初は簡単なものを考えていたのですが、折角作るのであれば、なにか津波で失われたものを題材にしてほしいというとてもとてもハードルの高い要求が、復興推進課の方からリクエストされたのでした。
これにはひじょうに悩みましたが、いくつかの候補の中で、街の遺産である、明治時代に福島県で初めての学校になった「観海堂」という茅葺き屋根の学校が、シンプルで「田舎にある農家」のような佇まいが気に入り、これを1人づつ作ってもらうことにしました。数枚の簡単な図面と写真から、ペーパークラフトのような教材を設計して、なんどもシミュレーションしながら用意したものがこれになります。

↓観海堂の解説

http://www.fukutabi.net/fuku/sinti/kankaido.html

4時間ほどのワークショップで作れるように、「観海堂」の組立てパッケージを設計!

観海堂ジオラマ_1

野外撮影をすると、在りし日の姿がよみがえります。

観海堂ジオラマ_2


この題材で、小さなお子さんから年配の方まで、みんな熱心に初めてのジオラマ作りを体験してもらったのです。

↓ワークショップの様子はこちらの新地町復興応援隊「新地町ノート」のwebページに書かれています!

http://shinchi-note.com/note/today/page688.php



津波でなくなってしまい、人々の記憶の中にしか残らない「観海堂」がおおよそ100棟ちかく誕生したのです!
作られた作品は、「100人いれば、100通りの個性」がハッキリと現れた、素敵な作品になりました。


さて、そしてもう一つのプロジェクトは・・・

「震災前の記憶のアーカイブ」として、津波でなくなってしまった街を、私がジオラマで再現するという事業です。
写真、画像、そして語り部、あの頃の記憶を残すさまざまな方法はありますが、もっとも多角的に捉えて、皆の記憶を刺激する立体物であるジオラマは最適な手段だと思います。私が最も得意として、その技を発揮出来る方法。

さて、新地町のどのシーンをジオラマ化するか?

それは街の方に決めてもらいました。いくつか候補をあげて、役場に用意したパネルの写真の下にシールを貼って、人気投票とともに、それぞれの心に残るコメントを書いてもらいました。

皆が選んだのは、ダントツ人気で、街の玄関といえる「新地駅」でした。

常磐線・新地駅はオレンジ色の屋根瓦が印象的な、「田舎町にある小さな駅」という雰囲気のかわいらしい駅でした。

これがかつての姿です。

参考_新地駅_1

参考_新地駅_2

※他Blog等からの転用

鉄道好きな方にも印象に残る駅らしく、画像検索でも旅の写真のBlogの中にも数多くの写真が見つけられました。

皆にとても愛された駅だったと分かりました。


それが、あの日。




参考_被災駅航空写真

参考_被災新地駅_2

※他Blog等からの転用

木造の駅舎は跡形も無く流れてしまいました。

津波により、大きくネジ曲がった常磐線の車輛と跨線橋は、多くのマスメディアにも登場し、記憶の中に残っている方も多いと思います。しかしこれが「新地町」という場所であることは、私は認識していませんでした。被害地があまりにも広範囲で、毎日報道される被害の映像に目をそむけてしまうようにもなっていました。


この被災した駅の写真は、地震の規模を示す貴重な資料となりますが、やはり新地町の方にとっては、あの頃の新地駅をいつまでも心の記憶として留めたいと思います。

私は、その人々の思いを、せめてジオラマの中にいつまでも「生きているような」新地駅を生み出してあげたいと思いました。

役場からの依頼であることから、JR東日本にも協力を求めて、図面等を提供してもらうようにお願いしましたが、手にいれられたのは数枚の平面図しかありませんでした。資料集めはいつものようにGoogleの画像検索であつめ、そこから目を皿のようにして毎日写真を凝視して、図面を書き上げ、制作に取りかかりました。

制作途中の写真をちらりと。

新地駅ジオラマ製作_2

アンケートに記載されていた、「駅の横にあったトイレを再現して欲しい!」の要望をうけて、再現中!


さらに塗装してこんな感じになりました。

新地駅制作3



新地駅ジオラマ制作_1




津波で大きくネジ曲がった、新地駅のシンボルである跨線橋も、在りし日の姿でしっかりと再現。
街の方が何度も行き来した跨線橋の階段の内部も、少ない資料を何度も何度も睨めっこしながら、図面を書いて作りました!

新地駅ジオラマ製作_3


駅舎の工作もさらに進みました。

新地駅工作4



完成お披露目まで残り1週間!ラストスパートで、頑張ります!

本当は定期的に、制作記事をあげようと思っておりましたが、いろいろと立て込んでおり、あっという間にラスト1週間になってしましました。

1週間後の10月30日(日曜日)に、福島県の新地町にて、このジオラマの完成お披露目のイベントが開催されます。

http://www.shinchi-town.jp/soshiki/4/jiorama-01.html

イベントでは、制作秘話のトークショーや、上記のワークショップで作ってもらった観海堂のジオラマを持ち寄ってもらったミニ展示会&コンテストも開催予定です。

新地駅のジオラマは、この地で保管&展示されますので、他の私の作品展示会などでは見ることが出来ません。

遠方になりますが、少しづつ復興している新地町、そして12月にようやく開通する常磐線の新しい新地駅を見に(まだ工事中ですが)来てくださいませ!




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プロフィール

情景師・アラーキー

Author:情景師・アラーキー
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■ 情景作家
■ 1969年生 居住地:東京・杉並 

「日常にあふれるさりげない光景」を立体化する事が得意なオールラウンドジオラマ作家。昭和ノスタルジーからアニメシーン再現まで製作範囲の守備範囲は無限。むしろ挑んだ事がない題材を与えられると燃えるタイプです。

「生み出すものに魂を込めて作る職人のようにありたい」・・・と願って「情景師」を名乗っています。

<過去の作例活動経歴>
●電撃ホビーマガジン
●電撃スケールマガジン
●モデルグラフィックス
●アーマーモデリング
●モデルカーズ
●パンツァーグラフ
●エクストラマガジン
(スペインの模型雑誌)

<<ジオラマ制作随時承ります>>
(製作事例:CM、テレビ撮影用、展示会用、トイの商品開発用、企業ノベルティー等)
・ジオラマ制作についての相談&質問もお答えします
・展示会等での作品貸し出しもしております。
・TV,雑誌,Web取材等の随時受付中。
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