超〜魅力的な廃車ジオラマ -その1
「形ある物は壊れる」
この世のなかの自然の摂理です。
自然から生まれたものはやがて自然に帰ってゆく・・・
とかく日本にはこの自然の流れ、時間の流れを表現する表現に「刹那」という言葉表現があります。太古からの大きな歴史の中でその形をとどめているのはほんの一瞬でありその瞬間に価値観を見いだすことにおいては日本人は本当に長けています。
日本の西洋化の立役者である道具としての車。人との生活の中でもっともたよって人生を共に歩んでいる相方。
実は意外にもこの車の寿命は非常に短いです。車検という法の元で管理されている車、特に商業車などは年間の走行距離もかなり長いですし維持コストと税金などの天秤により早ければ5年ほどで主有する事を放棄されて寿命を全うしてしまいます。もしかすると家電の平均寿命といわれている10年よりも遥かに短いかもしれません。
廃棄する際にもお金が掛かる車。リサイクルを待つ廃車置き場以外にも地方の街道沿いに廃棄された車の姿はよくみかける光景です。
土地の広い農家など畑の隅で車としての寿命をまっとうし、かわりに倉庫になって生きながらえている様子はもはや日本の良き光景と言ってもいいほどですね。
草木に囲まれながら朽ち行く姿、決してもうエンジンには火が入らない車。
さまざまな錆が本体にまわり始めてかつての光沢を放っていた自慢のボディーには艶が失われています。
本来の「動く」事を奪われた姿は悲しげでもありますが、それらからは「死」のイメージが浮かばないのはどうしてでしょうか?
それはおそらく日本人特有の朽ち行く姿もわび・さびとしてそれも美の姿とて愛でる豊かな感情にあると思います。
そんな姿に魅了されていろいろな作品を作り続けています。
■写真は 1/32の廃車置き場のジオラマです。
タイトル「昭和の終わりに」。想定は昭和の終わりである昭和63年の秋の光景。
昭和の時代に活躍したトラック達が静かに眠る姿を再現しています。3輪トラック、三菱キャンターが2台、そして本田のT360。なぜか彼からは悲しさよりも誇らしさが伝わって来ます。戦後の日本の高度成長を支えてきた働き者としてのプライドがあるからかもしれません。
草木に覆われた廃車置き場の光景は地方でよく見かける風景。所有していた会社の専用カラーリングに施されたトラック達が並ぶ廃車置き場はとても魅力的な光景です。古いオイルの匂い、そして錆の匂い・・・
郷愁を感じる嫌いな匂いではありません(笑)
(このジオラマはこちらではまた紹介しておりませんのでいずれじっくりと記事を書きますね)
■ダイオパーク製の 1/35scale の初代カブ。
新製品のカブを・・・どうしても・・・・・衝動にかられていきなり廃車にしてしまいました(てへ♫)。
しかし友人でもあるこのメーカーのダイオパークのオーナーである王さんに自ら「素晴らしい!!」と賞賛されてなんだか不思議な気持に。やはり模型メーカーの関係者でも廃車好きという事が証明されました(笑)
※なおこの写真のフロントフェンダーは錆び塗装をしておりますが、実際はここプラスチックで錆びません今は修正されてジオラマされるのを待っています。
↓この作品のブログ
http://arakichi.blog.fc2.com/blog-category-19.html
■ 1/24 scale タイトル:てんとう虫。
昭和30年代の国民車の立役者・スバル360はバリエーションも含めて非常に生産数が多い事から廃車置き場の定番車になっております。実はスバルの傍らにあるラビットスクーターと共に、かつて私の父親が乗っていた車。物心つくまえの赤ん坊だった私は後部座席が専用席でした。廃車になってボロボロになった姿ですが、それがかえって郷愁を誘うのか私の父親も非常に懐かしがって喜んで眺めておりました。
↓この作品のブログ
http://arakichi.blog.fc2.com/blog-category-16.html
■ 1/32 scale ホーターキャブの廃車
港の片隅に放置された漁港で使われていたポーターキャブ。海が近いので錆が非常に進行した姿を再現。
背景に見える廃漁船と共に朽ち行く姿と、港に住み着く猫のパラダイスになっている「生」の光景を対比させたジオラマ。
この作品はそういえば朽ちた漁船とその傍らにあるテトラポットを紹介しただけで詳しいジオラマの全体像をまだ紹介しておりませんでした。またじっくりと紹介します。
この廃車の制作方法を紹介した記事↓
http://arakichi.blog.fc2.com/blog-entry-33.html
■ 1/ 24 scale フォルクスワーゲンの廃車。タイトル「カブトムシ」
実は私が廃車作品を作るようになった第1作目の記念すべきジオラマです。
え〜と・・・・左右にいる私たち夫婦は合成ですので気にしないでください(笑)。
この作品は実は5日間で完成させたもの!。
急に模型コンペに出したくなって、兎に角残り時間5日の間にどんな物が作れるかと自分の限界にチャレンジした作品。短期間で効果を出す為に考え抜いた、錆びて塗料が剥がれた様子
「ダイレクトカット法」を産み出した切っ掛けになりました。
そういえばこのジオラマもまだこちらでは紹介していませんでした。これも途中写真も多くありますのでじっくりと紹介いたします。
■ 1/24 scale 廃車ラビットスクーター
非常に出来のよい完成品スクーターの食玩をハガキサイズの木のベースの上に小さなビネットとして仕上げた作品。
廃車作品の魅力はやはりさび塗装にあると思います。
AFV系の作品では錆の塗装はマストな技法になりますが、鍛えられて何層にも積層された鋼鉄はそう容易くは錆びません。それに近くに錆びた戦車を見る機会がないのでどんな風に錆びるのかは想像するしかありません。
しかし錆びた車は日常でも見かける事は多いですし、その錆の進行具合も千差万別でどの状態でも興味深いバリエーションが存在します。
展示会においてこれらの作品を並べると、こころなしかツルピカ仕上げの本当に綺麗で手間がかかった車作品よりも皆がじっくり見て行くように思えます。プラモデル=プラスチックなのに錆びているように見える!!という事象は、模型を良く知らない人でもかなり興味があるようで、子供から老人そして男女の差もなく目を輝かして見て行く人気の高いジオラマの分野ですね。
おそらく非常に完成度の高い塗装仕上げとディテールの完成品としてのミニカーが世の中に溢れているので、非常に高度で手間がかかる艶系塗装の作品とは素人は区別がつかないからかもしれませんね。
錆ってほんとうにいろいろな色があって、その錆び方も非常に綺麗。
模型を錆びで「汚す」という表現よりも「演出する」という表現の方が豊かで奥深いと思います。
天然の鉱物である金属をあらゆる手段で加工して作られた車。それが自然の中に放置されるとやがて錆びて
朽ちて、最後は砂のように地面に馴染んでしまいます。生物となんら変わりはないというのが興味深いですね。
死んでいる・・・というよりも自然に帰ってゆく・・・・。
そんな希望にみちたストーリーを描きたくなるんでしょうね。
そして、もしかしたらその車両を溺愛する方に見つけられて、綺麗にレストアされてまた元気に走り回すかもしれない。そんな希望に満ちたストーリーも想像出来ます。
車の模型が好き。ピッカピカに仕上げられた作品ももちろん好きですが、こうやって錆びて朽ちてゆく模型も面白い。模型の楽しみ方の幅が広がります。
模型の楽しみ方を限定しない事、見方を変えるがジオラマを楽しむ最高の手法だと思います。
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