メカトロウィーゴのひみつ展ジオラマー完結編
東京・渋谷のギャラリーXで開催していた、メカトロウィーゴの展示会は11月29日に無事に終了いたしました。
このジオラマの上で、来場していただいた皆さんが持込んだマイ・ウィーゴ達で楽しそうに写真を撮る姿が連日絶えること無く続いておりました。
展示会の最終日には、ご覧の通りにジオラマ展示の壁の一面に、皆さんの写真作品がびっしり!!
この光景が見たくて、撮影用のジオラマとそれを撮影した壁面アートを提案したのです。
ジオラマは客観的に展示ケースに入れられた作品を楽しむのも1つの方法ですが、こうして作品の中に、自分の作品を置いて、それを撮影することで、新たな「作品」が産まれるのも楽しみ方の1つだと考えています。
しかし、この楽しみ方が成功したのは、この提案を受け入れてくれて、そして毎日このジオラマの横に付きっきりで来場者の撮影のサポートをしてくれた千値錬の方々のおかげ。そして、メカトロウィーゴを産み出した小林さんとそのファンの人々の信頼があってこそ実現できたのだと思います。
私はそれをほんのすこし手助けしただけ。私も単なるメカトロウィーゴファンですからファン代表としてこのイベントを盛り上げたに過ぎません。
ジオラマは今後もメカトロウィーゴのイベントにて、同様の撮影企画を行なう予定だそうです。
すでに千値錬さんの所有財産に成りましたので、様々なイベントで使っていただけると思います。
さて、このプロジェクトが無事に終わったので、このジオラマの制作記を記録としてまとめておきます。
制作期間が約6日間だったこともあり、すべてを記録として残している訳ではありませんが、読んでいただいた方が何かジオラマ製作のヒントになればいいなと思います。
制作したジオラマベースには、過去の私のジオラマ作品でも使った事がある「トランク方式」を採用。
利点は開いた蓋の裏側に背景を設置すると、正面から撮影した際は美しく背景付きでの写真になること!
「メカトロウィーゴのノスタルジックな雰囲気に合うレトロなトランク!」というコンセプトで、ヤフオクで「レトロ かばん」などのキーワドでこのかばん(しかもほぼ未使用のデットストック)を見つてから、ジオラマ製作が本格スタートです!。大きくなコーナーRが四方向に付いたデザイン、そしてこのくすんだ水色!すべてがイメージにぴったり。
かばんは横長のフォルムがベーシックなので、奥行き(高さ?)があるデザインは珍しいです。
ケースの内側にピッタリ収まるようにスタイロフォーム(建築用の断熱用発泡素材)を加工します。正面から見て、奥行きが出るように「強制パース」がつくように奥に向かって車幅が狭くなるように車道の両側のラインを引いて、左右に紙で構造物のボリュームの見当をつけておきます(このぐらいの大きさで何か建物を作れば、正面から撮影して背景も綺麗に収まる写真が撮れるというテストです)。
道路の工作では、3mm厚のタミヤのスチレンボードを使い、道中央から左右にこう配がつくように太鼓状に削ります。
削る際の道具はNTカッターの「ドレッサー」が使いやすい!
プラ工作から木工、発泡の加工まで、平面加工にはこれを多用しています。私の無くてはならない相棒の1つです(付け可能なプレートには中目と粗目があって便利です!)
こう配加工が終ったスチレンボードには、布ヤスリ(120番)を貼付けてアスファルト道路を作り出します。
布ヤスリの表面の石がキラキラとした雰囲気と、塗装せずともその風合いがアスファルト道路の質感にソックリ。手軽に道路を作れる方法です。
そのままでは、表面がざらつきすぎていて、「ヤスリ」そのものなので、2枚を面であわせて、左右から手を拝むように合わせて、表面を擦って触って指が引っかからないぐらいにざらつきを押えると下処理完了!
接着にはセメダインの万能接着剤「スーパーXG」を使います。乾燥時間が短く、接着後も粘りがあるので剥がれにくい特徴があります。
丁寧にマスキングをして、道路表記をエアブラシ塗装。O型の私ですが、こういうチマチマした作業は好きです♬
この中央線の周囲にまだら模様のラインが入るのは急カーブがある道。なんでこんな面倒な道路表記を選んだのかと言えば・・・ポスターの絵がそうなっていたから(泣)
次に歩道の工作です。
縫い針をピンバイスに差した「けがき針」で、歩道に敷かれたタイルを彫刻します。
彫刻が終った後に、モデリンペーストを少し水で緩くしたものを筆塗り(トントンと叩くようにして塗布)、表面を薄く覆うイメージで塗布します。
歩道の表面のゴツゴツしたテクスチャーを付けること、この上に塗装した際の「目止め」のためです。モデリングペーストは普通の石膏と異なり乾燥後も独特な粘りがあるので、塗布しておくと柔らかいスチレンボードの表面を保護することが
さらに横断歩道や歩道部をマスキング塗装して作り込みます。布ヤスリに道路のラインをマスキング塗装するだけで、十分にリアルな風景へと変貌させることが出来ます!
さらにリアルに作り込む為に、マンホールを設置。
こちらは1/35スケールで国内のさまざまなマンホールエッチングを販売している「Three Sheeps」さんの製品。チョイスしたのはマンホール中央に「警」の文字が入った、警視庁が管轄する信号機用の配線用マンホール!
↓普段はイベント等で販売しておりますが、通販でも手に入ります。詳しくは「Three Sheeps」さんのTwitterを!
https://twitter.com/Three_Sheeps
マンホールの周囲は、布ヤスリの小片を貼付けて、「工事して新たに設置した」演出を。私がアスファルトジオラマを作るとお約束で作るディテールです!
道の左側には、モチーフにしたイラストにありました駄菓子屋のような商店を制作。薄ベニア板とヒノキの細材を組み合わせて6時間ほどで作り上げたもの。兎に角時間がないので、特急工作だったので途中写真がありません。
看板類をPCソフトイラストレーターで制作。琺瑯看板はGoogleの画像検索で見つけたものを加工して家庭用インクジェットプリターで光沢紙プリント。退色を防ぐ為にUVカットクリアースプレーを塗装しております。
道の右側の空間は、モチーフイラストでは何も描かれていなかった空間ゆえに、最後までどうしようかと悩んだところ。
とりあえず、背景の写真との繋がりを考えて、木を設置することに。
制作時間短縮で、幹の制作は友人のすこっつ・ぐれいさんに御願いして、針金を使って上手くリアルな木を発注して作ってもらいました。0.5mmの針金を捻り、ハンダで固めて幹を作り出しているので、自由に枝振りを変える事ができるのです。彼の作る木は生きているようなので、予算に余裕はある際には頼んで作ってもらうことはあります。
その木に「紙創り」製のジオラマ用のペーパー葉っぱを瞬間接着剤(ゼリー状)で接着。とてもリアルな葉ですが、この木のボリュームを作るには4セット(1シート:1000円)必要です。
木は作りましたが、左側のエリアをどのようにまとめるかは、決まっておりませんでした。撮影出来るジオラマのコンセプトとしては正面からみた、ポスターと同じアングルで撮影できることはメインのコンセプトですが、ジオラマの利点は、どのアングルからでも撮影が楽しめて、それぞれに違う面を演出しなければなりません。
残された時間で、特に手をかけずに、このジオラマに違和感のない空間・・・
ということで、長いブロック塀と校門を造り、その内部を学校の一部である演出を思いつきました!
学校壁や門らしさは、市販のプラモデルの梯子状のパーツを使い、1時間ほどで制作。汚し塗装を施して、学校にありそうな看板をGoogleの画像検索で探したものを、駄菓子屋の看板と同様のプリントで制作。
学校の門の内側は、砂まじりの校庭をイメージして、近所で採取した土と砂を混ぜた物を、水で溶いた木工ボンドで接着。
そのままでは「校庭」らしさがが足りない・・・ふと、机の上にあったプラモデルのタイヤを見て思いつきました♬
小学校の校庭の隅にあった、半分埋まった運動用タイヤ!
ゴムタイヤを半分にカットして、「ホワイト、赤、青、黄色」の原色で塗装。乾燥後に紙ヤスリで擦って、使用感を演出!
こうして約6日間の制作にてこのジオラマを完成して、依頼主である千値錬さんに納品する事ができました♬
そういえば・・・折角撮影用のジオラマを作ったのに、完成してすぐに納品してしまったので、私があれこれと撮影して楽しむ時間がほとんどありませんでした(泣)
唯一、撮影した写真がこれ。
タイトル「蒲田行進曲」(笑)
お後がよろしいようで。
今後のメカトロウィーゴの情報は作者である小林和史さんのBlogなどでチェックしてください♬
http://moderhythm.blog26.fc2.com/
<追記>
この記事で紹介したメカトロウィーゴのジオラマは2021年に発売された新刊『ステキな広告ジオラマ』に詳細掲載されております!
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※2021年2月11日発売
2015年にジオラマ作家として独立してから5年間に受注した仕事をまとめた写真エッセイ集。今までのジオラマ本のように作り方のHow to 記事も盛り込みながら、それぞれの仕事をどのように受注してアウトプットしたかを綴ったビジネス本として執筆しました。
好きな事を仕事にしたいクリエイター志望の方へのヒントになれば!
※2019年4月10日発売
失われつつある昭和の駄菓子屋を1/24スケールで徹底的に作り込み、その作り方を図面、写真で超解説したジオラマHOW TO 本。和風日本家屋の構造解説でドールハウスや鉄道模型などのジオラマ作りの参考になります!
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