一般的な道路がある光景
久しぶりにジオラマのHow to記事です!
最近は告知ばかりのBlog記事にあきあきしていた方、お待たせいたしました。
こちらのBlogの他にTwitterやFacebook、インスタグラムなど、取りあえずあれこれ手をだしていて、他のSNSは気楽に書けるのですが、こちらのBlogはしっかりと書くことをポリシーにしていますので、つい後回しにしてしまって‥‥
ちなみにそれぞれのアカウントはこちら。それぞれ、投稿内容に変化を与えております。
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新しいものが好きなんで、とりあえずあれこれと、試してみています。
さて、一般的な『現代のアスファルト道路と歩道』モチーフの手のひらサイズのビネットの製作行程を解説します。
「ビネット」とは‥‥
ジオラマの一種で、更に小さく切り取った空間を凝縮したサイズのジオラマのことを言います。主役になるのはフィギュアやロボットなどの単体と、その光景が「どこなのか?」が最低限解るような範囲だけを作るのが定義。
今回は「とあるアイテム演出」の作例として作らねばならない依頼が急にあり、短時間で制作しなければならなかったので、ベーシックな作り方でこのシチュエーションを作りました。
良い機会なので細かく解説いたします。
<ステップ1>
シーンは現代の日本、一般的なアスファルト道路と歩道。スケールは1/35。直径100mmの円形に収めます。
使用するのはタミヤのスチレンボード3mm厚と5mm厚。5mm厚の土台の上に、3mm厚の歩道と3mm厚のアスファルトが乗るイメージです。ちょっと高額な「タミヤ」ものを使っているのは、一般的に売られているものよりも固さがあり、彫刻などに適しているからです。他のメーカーのものを使うと細かい彫刻などの際やカッターで切った際に、断面がツレて、汚くなることがありますが、タミヤ製のものはそれがななく、絶妙な固さで作業が捗ります。
さて、歩道の部分と、アスファルト道路の部分を3mm厚のスチレンボードで作りますが、(写真1)の緑のラインでパーツを別けて制作します。道路は道の中央から両側に向かって雨水を流す為に傾斜がついています。これを再現する為に、道端の側溝に向かって円弧のような緩やかに傾斜をつけて、80番ぐらいの紙ヤスリで削ります。簡単に作りたい方はこの作業はなくてもかまいませんが、このちょっとした表情付けがリアルな光景を生み出すことにつながります。
次に道端の側溝と歩道のタイルを彫刻します。
もっとも簡単なやり方はボールペンを使って強めに書く方法です。ポールペンの先端は「玉」になっているので適度に回転しながら描けるので、スチレンボードの表面を綺麗に凹ませることができるからです。精度を出したい細かい彫刻は、けがき針を使います。市販されてもいますが、写真のようにピンバイスの先に、縫い針をつけるだけで程よいけがき道具が出来ます。歩道のタイルは様々な種類がありますので、Googleの画像検索などで見つけたものを参考に。このタイルのサイズをいい加減にケガくと精度がでませんので、きちんと計って均等に線を入れることを心がけるといいでしょう。
ちなみに、円形にカットするのは、サークルカッターを使います。厚めの生地も切れるこのタイプは便利ですので1つはもっておくといいでしょう↓
<ステップ2>
彫刻が終りましたら、下地としてリキテックスのモデリングペーストを塗布します。
これは画材用の大理石の粉をペースト状にした画材用下地材です。私はジオラマ工作において、地面工作に多用しています。乾きも早く乾燥後に粘りがあるので、石膏のように割れることが少ない素材です。
毛足が固めで強い筆で叩くように歩道と側溝を塗布します。彫刻した隙間の奥に塗れるように。表面が「濡れる」ぐらいの厚みで十分です。あまり厚塗ると、けがいた彫刻が埋まってしまいますから。
叩くように塗るのは、表面を凸凹にして、コンクリートの表面の表情をつける為です。よりゴツゴツした表面を作りたいときには歯ブラシで叩くように塗布することもあります。
<ステップ3>
アスファルト道路の工作です。
このBlogや私の本でも紹介している「簡単に出来るアスファルト表現」として「布ヤスリ」を使う方法。
80番の布ヤスリを2枚、面を合わせるようにして拝むように擦り合わせます。もの凄い騒音と、粉が出ますので、お風呂場か野外でやることをお勧めします!
指で表面をなでて、引っかからないぐらいになるまで行ないます。小さなスケールで使う際には、より削りを行なって、表面の凸凹を削るといいでしょう。
この布ヤスリ(80番)での再現方法は1/48スケールから1/24スケールぐらいまでは使えます。特に塗装しなくてもリアルな雰囲気のものを作れます(写真は1/48 scaleのタミヤのシトロエン。珍しくツヤ塗装で仕上げたものです。私だって光沢仕上げもつくれるんですよ!:笑)
スチレンボードへの接着は2液を混ぜる「エポキシ接着剤」を使っています。5分硬化型だと時間を短縮できます。他には粘りがあるゴム系の接着剤でもよいでしょう。
<ステップ4>
基本塗装行程です。
アスファルト道路部分をマスキングして、側溝と歩道をタミヤのサーフェイサー(グレー色)で下地塗装をします。その上から軽く「粉をかける感じ」で黒色の缶スプレー(私はクレオスの黒サーフェイサーを使用)を吹くと、黒い斑点が出来ますが、それがコンクリートの質感を再現できるのです。
歩道はタミヤアクリルの茶色系を溶剤で薄く解いた塗料で各タイルがランダムになるように塗ります。乾燥後にタミヤの「オリーブグリーン」で苔色演出です、溶剤で薄く溶いて、流し込み塗装をします。水がたまり易い部分をイメージして塗装します。
<ステップ5>
さて、上記写真に突然マンホールが現れましたが、これは「Three Sheeps」さんが出している1/35 スケールのエッチングパーツです。
様々な種類のマンホールや、NTTの点検用金属蓋など、現在の風景を作り出すには最適なパーツ。1枚は持っておくといいでしょう。
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<ステップ6>
基本塗装を終えた後に、さらにリアルになるように「汚し塗装」を加えるのですが、もっとも簡単な方法を解説します。それは、庭や公園などで採取した、ごく普通の「土」をぶちまけること!
実際の道も、施工後には綺麗な状態ですが、次第によごれてくる原因のほとんどは砂や土による汚れ。ならば実際と同様に行なえば、リアルな汚れになるはず!とやってみた所、かなりいい感じに。私の造るジオラマのほとんどはこのやり方で汚していると言っても過言ではありません!いわば天然のパステルやピグメントという考え方です。
土は、100円ショップで販売している金属製の茶こしで振るいにかけておくと使い易いです
(写真はダメなパターン。本当に自分の家の庭からひとつまみして、そのまま撒いているので小石が多く混ざっています)
歯ブラシでこすりつけたり、指でこすりつけたりして、まんべんに広げます。
余分な土を落とした後に、透明艶消し缶スプレーで塗装すると、土汚れは、しっかり固定されます
(コツはふわっと軽く吹いて重ねるように塗装します)
<ステップ 7>
出来たベースを俯瞰して見た時に、アクセントとして「白線」が欲しくなったので、加筆します。本来ならば、この塗装をやったあとに土汚しをした方がいいですね。
マスキングした後に、筆でムラになるように艶消しホワイトで塗装します。これは施工後に時間が経過して塗装が擦れた様子を再現する為です。
乾燥後に軽く紙ヤスリで擦って、先ほどの土をこすりつけて仕上げます。
<ステップ 8>
最後に、フラットブラックを溶剤で溶いた塗料で「染みよごれ」を加えます。
道には、油よごれ、通行人がこぼしたジュース等の汚れなど、さまざまな染みがあります。これをほんの少しだけくわえていくとリアルな雰囲気が生み出せます。
直径わずか100mmの空間ですが、一般的な道の作り方の要素が詰まっています。
ちなみに、この道路は、すでに作ってあった金属フェンスを取り付けて、アンティークのブリキの缶を台座にして、こんな雰囲気に仕上げました。
ある「主役」が加わって、さらに手を加えて、仕上げる予定です。完成しましたら、いずれ紹介いたします!
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