看板建築「NHK・サワベ不動産』
東京の下町に残る「看板建築」と言われる建物が大好きです。
看板建築とは・・・商店街に、通りに面した建物の表面部分だけが大きく看板のように張り出した商店建築の事。真正面からみると洋風の真四角な建物のように見えますが、すぐ裏は伝統的な日本家屋そのもの。主に表面は銅板やモルタルで覆われており、装飾は江戸由来の伝統的な文様を巧みに取り入れており、「疑洋風」なデザインが魅力的です。
この建築は誕生がハッキリとしており昭和一桁を境に東京中に広がりました。
理由は大正13年に発生した未曾有の大災害「関東大震災」です。これによりほぼ江戸期からの建物は消滅し、街の防火の目的で木造建築の表層には不燃加工をしなければならない法令が出来たのです。
そこで、誰が最初にやり始めたのか?定かではありませんが、同時は比較的安価だった銅板をふんだんに使い、「どうせ建物表面を覆うならばちょいとシャレた作りにしようじゃないか!」と技を競うように様々なデザインの看板建築が増幅していったのです。
防火都市として大規模な区画整理が終った昭和3〜5年を端として、ピッカピカの銅色をした建築がタケノコのように東京の街を覆い尽くした光景は、まるで未来都市のようだった事でしょう。しばらくするとどの銅色も黒く変色して、緑青が吹いて落ち着いた色に収まります。
この緑青のグリーン色のグラデーション、最高ですよね。
私、ジオラマ趣味やバイク趣味、城巡りやプラモ収集など、いろいろな趣味があるのですが、この「看板建築」巡りもとても重要な趣味の1つなんです!
・・・・で、
上記写真は・・・
実は、1/24スケールのジオラマでした!
今回、ドラマに使用される特撮用のプロップとしてジオラマを制作しました。
かねてからやってみたかった映像用のミニチュア制作です。
1/24スケールにしたのは、ウルトラマンやゴジラなどの特撮用のミニチュアの標準スケール「1/25」に合わせたからです。道路標識などのプラモ用パーツが使える事の利点もあります。
さて、今回は東京下町に残る昭和一桁に立てられた看板建築、3代目の若い店主の「サワベ不動産」の物語。
制作予算の関係上、原寸大のセットを作る訳にはいかず、それならばリアルなジオラマで撮影をする事を思いついた制作会社からのオファーでした。制作期間も予算も限られておりましたが、要望が「看板建築で!」との事でしたので速答で仕事を受けました。
デザインも含めて、すべてやらせていただけるという事で、イラストレーションソフトでデザイン画を起こして、打ち合わせ後に制作開始!
東京下町に現存する看板建築をモチーフにしています。
建物の表面はプラ板をベースにして、銅板葺きのテクスチャーとして「プラペーパー」を貼付けて表面の微妙な凹凸を再現。
1F部分はすでに3代目に変わってから改装されて現代風のサッシやビニールの庇が取り付けられているという想定で、作り込みました。すでに左右の建物は建て替えられていて、ビルとビルの間に頑張って建っているという設定ですので、この不動産屋の側面はほぼみえませんが、この手の建築によくある「下見板張り」仕上げで。
雨樋も細かく作り込みました。まぁこれも映像ではほぼ見えませんが、ここらへんは手を抜けないモデラー故のこだわりですね。
そして、以前から作ってみたい!と思っていた「銅板の緑青表現」。
これはラッカー系で深緑色に着色したベースに、エナメル塗料で「グリーン+白+青」で調色して筆でムラになるように塗装。塗り上げた後には綿棒に溶剤をしみ込ませたもので拭き取りを部分的に行なって緑青に、スモックで黒く変色した様子を再現しました。
当初、時間と予算の都合で、左右の建物は写真を立体的に構成したもので作る予定でしたが、流石にそれではディテールの差が出てしまいますので、それなりに作り込む事に。
ジオラマとしての造り込みよりも、映像としての効果を狙った作り方をしていて、電飾も施して様々な撮影に対応出来る様にしています。
5月4日(月曜) NHK総合 22:55
「おせっかいなサワベ不動産」
◇おせっかいなサワベ不動産◇住む人の目線で送る世界紀行番組。ある町に、おせっかいな不動産店がある。そこでは客の条件を基に、頼んでもいないのに、世界の面白い物件を次々に紹介する。家賃や間取りだけではなく、近くのスーパーの売れ筋商品や近所のうわさ話など、何でもプレゼンテーションするのだ。その口上を聞くうちに、何だかそこに住んだ気になってきてしまう。その国のその土地のその家に住んだら、一体どんな人生が待っているのか。ハライチの澤部佑が不動産店の社長に、木南晴夏が従業員に扮(ふん)して送る。
今回限りのスペシャルドラマのようですが、評判次第で連続ドラマにも展開するとか。
どんなドラマにしあがっているのか楽しみですね!
GW中ですので、お出かけ前に録画チェック!
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2015年にジオラマ作家として独立してから5年間に受注した仕事をまとめた写真エッセイ集。今までのジオラマ本のように作り方のHow to 記事も盛り込みながら、それぞれの仕事をどのように受注してアウトプットしたかを綴ったビジネス本として執筆しました。
好きな事を仕事にしたいクリエイター志望の方へのヒントになれば!
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失われつつある昭和の駄菓子屋を1/24スケールで徹底的に作り込み、その作り方を図面、写真で超解説したジオラマHOW TO 本。和風日本家屋の構造解説でドールハウスや鉄道模型などのジオラマ作りの参考になります!
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