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ある男の3年間の話


2016.jpg



時に、西暦2016年 12月



彼は、あるトイメーカーの社長室に居た。

その当時に別のトイメーカーの企画アドバイザーをしており、そこの社長から

「私に逢いたいという人が居るから紹介していいか?」

言われたからであった。今や飛ぶ鳥を落とす勢いの新進気鋭のメーカーの社長が逢いたいという!。
メディアではなんども見たことがある人に逢えるという興味本位でその会社向い、普通の社長室にはまったくありえない、おもちゃ箱をひっくり返したような遊び心ある部屋に通されて、血圧が上がりっ放しだった。

そしてそれを告げられた、

「2020年にオープン予定のジオラマのテーマパークが計画されているが、現時点では計画も人材もかなりヤバいので手伝って欲しい」



それは、ドイツにあるミニチュアワンダーランドの日本版を作るという計画だった。






もちろんジオラマ好きならば誰もが知っているあの場所が日本に来る!

夢のような事業だ。
あの施設を自分で作れる!!


しかし、オープンまで残された制作期間や人材など、聞けば聞くほどあまりにも無謀すぎる計画にしか思えず、絶句してしまった。

その社長も
「自分でお願いしてなんだけどかなりやばい仕事だから断ってもいい」と。

しかし、ジオラマのプロとしてその計画を知ってしまった以上は退くことはできない。悩むことなくその場で計画参画を了承した。



それから数ヶ月後、

時に、西暦2017年 4月


悪魔との契約を交わしたような気持ちで、本丸である企画会社に出向いた。たった数名の企画スタッフがその巨大物流倉庫の一角に小さな机を並べていた。正直、大きなプロジェクトを進めているようには見えなかった。


そこで、このプロジェクトではディズニーランドのように、いくつか異なる世界が計画されていて、その中に、ある有名アニメに登場する都市を作りたいが、誰も詳しい人がおらず、またどのように進めたらいいのか皆目見当がつかないと相談を受ける。
計画だけならば、その都市の巨大ジオラマなど鼻血が出るような企画だが、予想以上に何もない荒地からの出発にめまいがした

彼の具体的な仕事は「公式アドバイザー」ということだった。
企画立案から最終的なジオラマの仕上げの監修、計画が進んできた時には具体的な制作に関わるという契約。
月額支払いの契約社員のようなものであった。

彼はすぐに市販の玩具で簡易モックアップを作り、プラン図を作り、必要な設計条件を割り出し、そのために必要なモデラー、CGモデラー、建築家の紹介、即戦力になるメーカーをコネクトした。

第三新東京市プラン1


自分でも作ったことがないギミック満載の超巨大なジオラマ。

アニメの再現を完璧に目指す!という、企画会社のトップの目標は、残された制作時間や実現可能な人の数では確実に無理。
しかし、何事にも妥協しないトップの性格に翻弄される毎日で、机上のプランを練る作業だけで作業に入れず、時間が無駄に経過していく。

第三新東京市断面_6_2


「自分は模型のことはよくわからない」

トップの口癖にに、ならば企画を進めるモデラーたちの意見を尊重してくれ!と苛立ちは募るばかり。

いつの間にか、彼の仕事の「アドバイザー」という業務範囲の中に、スタッフの愚痴や不満を聞き調整するという仕事も加わる。

スタッフが徐々に増えて来てからは、福利厚生の充実を促す為のお昼のお弁当の整備など、アドバイザーの仕事はさらに多岐に渡る。

深い深いジャングルを開梱するような日々だが、志は高い技術者が増え、歯車が徐々に回り始めた。

人が増えるともちろん問題も増える。

現場では次第に会議で決定されたことがいつの間にか覆されていたり、行くたびに変わるコンセプトに翻弄されて、本当に実現するのか疑問に思うことが多くなってきた。

公式アドバザーの意見を聞かぬ体制。
いつの間にかお飾りの存在、名ばかりの存在に。。。

制作意欲もそがれることも多々あり、なんどもなんども辞めようかと思った。


そして、3年が流れ・・・・


時に、西暦2020年6月11日。


それは完成して産声をあげた、らしい。


「らしい」とは、彼はその完成を見ていないからだ。



初日を迎えたその場所に関係者として呼ばれることはなかった。

企画の歯車が回り始めると、彼はいつの間にか、企画からはずされていたのだ。
HPに記載れていたアドバイザーとしての彼の名前もいつの間にかなくなり、おそらく、その計画の記録の功労者の中にも名前はないだろうのだろう。


彼に声をかけたトイメーカーの長にも、このプロジェクトの長にも、労いの言葉も感謝の言葉もない。


しかし、人生の3年間を削った契約が終わり、肩の重荷が下りて心は晴れやかだった。

そのテーマパークの誕生はめでたいことだと思う。

彼が思い描いていた世界とは別の世界が広がっていたが、これまでの様々な事は過去の事、これかが大切。
どうそれは進化するかが肝だろう。

目指していたドイツのミニチュアワンダーランドは17年の時間をかけて作り上げていた夢の国。
しかも鉄道模型界のカリスマと呼ばれるブラウン兄弟の考えに参道した300人近いモデラーが作り上げてきた世界である。
この人の元で働きたいというのはいいものを産む。

たった3年で作ったことはすごいことだとは思うが、肩を並べるのは・・・・



実は、彼はオープンまでの最後の1年は、企画メンバーからは外れて、ジオラマ作家として自宅の工房に籠り、おおよそ1人で作れる量ではない約70棟の建物制作と格闘していた。1/80 スケールの東京・麻布十番の街の再現。実在する建物を調査設計して、バブル景気絶頂のあの世界を作り出すという別の戦いに挑んでいたのだ。

IMG_5003.jpg


彼の作ったこれらの建物は、成果としてあの施設のどこかに存在する。

この仕事も・・・オープンを迎える前日まで制作していたが、

結果として、「ありがとう」と言われることは少なかった。


決して表には見えない2年間の仕事と、具体的に見える1年の仕事。

3年の彼の奮闘はこうして終わった。






・・・そんな終わった話よりも、しなければならない事があった。
数週間前に別の仕事の相談が入ったからだ!

「予算も時間もないけど、あるジオラマ作りで何とか力を貸して欲しい」

3年もの月日の中で「この人の為に汗をかきたい!」と思える仕事では結果としてなかったが、今回の仕事は「この人達の為ならば人生削ってもいいと」思える仕事だと感じた!


人の為に人は動く。


そう言う仕事をしたい。

表には見えない仕事、
報われない仕事、
人に嫌われる結果になるかもしれない仕事。

昔から貧乏くじをよく引くタイプだが、それは彼の人生に課せられた課題だと思って、今日もジャングルを切り開く。

そこにジオラマがある限り。
彼の力を借りたいと思う人がいる限り。



おしまい。




※彼が誰なのか?それはわかりません(笑)

※「プロジェクトX」のように、表には見えない様々な人が関わってそれぞれの物語があるということを頭の隅に置きながらその施設を楽しんでいただければと思います。

※ブログがまったく更新されなかったのは、彼がこのプロジェクトに関わっていたせいかもしれません。

今後はまたブログは少しづつ書きたいと思います!



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プロフィール

情景師・アラーキー

Author:情景師・アラーキー
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■ 情景作家
■ 1969年生 居住地:東京・杉並 

「日常にあふれるさりげない光景」を立体化する事が得意なオールラウンドジオラマ作家。昭和ノスタルジーからアニメシーン再現まで製作範囲の守備範囲は無限。むしろ挑んだ事がない題材を与えられると燃えるタイプです。

「生み出すものに魂を込めて作る職人のようにありたい」・・・と願って「情景師」を名乗っています。

<過去の作例活動経歴>
●電撃ホビーマガジン
●電撃スケールマガジン
●モデルグラフィックス
●アーマーモデリング
●モデルカーズ
●パンツァーグラフ
●エクストラマガジン
(スペインの模型雑誌)

<<ジオラマ制作随時承ります>>
(製作事例:CM、テレビ撮影用、展示会用、トイの商品開発用、企業ノベルティー等)
・ジオラマ制作についての相談&質問もお答えします
・展示会等での作品貸し出しもしております。
・TV,雑誌,Web取材等の随時受付中。
<出演事例>
・おはよう日本(NHK)
・めざましTV(フジテレビ)
・タモリ倶楽部(テレビ朝日)
・怒り新党(テレビ朝日)
・情報ライブミヤネ屋(TBS)
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